不安障害とは
不安障害とは不安を主な症状とした病気のグループです。
不安は誰もが感じるものです。しかし、不安障害では「普通の不安」ではなく「病的な不安」が強く現れます。
病的な不安とそうでない不安(普通の不安)との違いは次のとおりです。
普通の不安
- 不安の対象や理由がはっきりしている。
- 不安は長くは続かない。不安の原因が取り除かれれば治る。
- 自制できる。
- 不安の内容は第三者から理解されやすい。
病的な不安
- 不安の対象や理由が漠然としている。
- 不安が長く続く。
- 自制できない。
- 不安の内容は第三者から理解されにくい。
病的な不安も基本的には普通の不安の延長線上にあります。
例えば、手を洗わないとばい菌に侵されるというのは間違いではなく、それに対する不安は普通のものです。しかし、少し何かに触れただけで全身がばい菌で侵される気がして、何かにつけて手洗いしないといられないのは、病的な不安といえます。つまり、理解はできるもののそこまではやりすぎというのが病的な不安です。
「なぜ自分が不安なのかわからない」「自分がどうなってしまうのか分からない」
不安障害ではそんな不安が現れ、長くその人を苦しめるのです。
不安障害は病気のグループです。不安障害には次のようなものがあります。
- 全般性不安障害
- 社会不安障害
- 強迫性障害
- パニック障害
- PTSD
病的な不安がパニック障害、社会不安障害、強迫性障害といった様々な不安障害を引き起こします。
このページでは、ある不安障害患者Sさんの例を紹介させて頂きます。
不安障害になるきっかけ
不安障害になるほどの不安を引き起こすきっかけにはどのようなものがあるでしょうか。
人生の様々な場面で、病的な不安をあたえるきっかけがひそんでいます。
子供のころ
- 習い事のプレッシャー
- 受験戦争
社会人になって
- 就職活動
- 職場への適応
- 出世戦争
- 転職活動
特に女性の場合
- 結婚・妊娠・出産による生活の変化
- 仕事との両立をどうするかの判断
その他生活の場面において
- 病気・事故
- 家族との別れ
- 近所トラブル
などなど、病的な不安の種はいろいろなところに隠れています。
Sさんのケース
エンジニアとして働いていたSさん、普段から忙しく働いていましたが、一緒に働いていたエンジニアが同時期に次々とやめてしまいました。できるエンジニアがSさんしかいなく、やめた人の仕事をほとんどSさんが引き継ぐことになってしまいました。
残業や休日出勤がつづき、また、新しい仕事に伴い会議が増加し、疲労感があふれる中、会議にも出ないといけません。Sさんのイライラは、会議で爆発してしまい、上司であろうが誰彼かまわず激しく罵倒するようになりました。
Sさんはだんだん、周りに避けられるようになります。そのうち「あの人頭おかしいんじゃないの?」そんな会話を耳にしてしまいました。そんな経験により、会社に行くのが億劫になってしまいました。
不安障害の一般的な症状
不安障害にはさまざまな種類がありますが、不安が募ることで表出する症状には共通するものがあります。それは次のような症状です。
- イライラ…落ち着きが無い。
- 攻撃的になる…攻撃することで安心を得る。モラハラやDVに繋がることも。
- 過干渉…必要以上にやり方を指図する。未知に対する不安の現れ。
- 過度な確認行為…不安を拭えきれない。強迫性障害に繋がる。
- 決断が遅くなる…もっとよい考え方があるのでは?と不安になる。
- 仕事が遅くなる…もっとよくできるのでは?と不安になる。目標を小さく設定するのが改善のポイント。
- 身体症状…めまい、頭痛、息苦しさなど。
- 依存…不安から逃れるために薬、酒、買い物などに依存する。リストカットや過食もその1つ。
- 引きこもり…他人や社会と接するのを極度に怖がる。
Sさんのケース
会社に行くのが億劫になったSさん、会社だけでなく、人と会うこと自体ががこわくなり、人混みを嫌うようになりました。
それでも無理して出社しているうちに症状はだんだんひどくなっていきました。
家から出る時はマスクがかかせなくなりました。出勤や帰宅の時はもちろん、会社の中でもマスクを外すことはありません。
マスクをすると顔を隠せるので少し安心するのです。
しかし、そんな状態で出勤を続けても長続きしませんでした。1カ月後には会社にいけなくなり、ついには退社にまで追い込まれてしまいました。
そして、ほとんどの生活を家の中で過ごす、ほぼ引きこもりの状態にまで発展してしまいました。
不安障害の治療
不安障害の治療には、大きく薬物治療や精神療法があります。
この2つの治療を併用するケースがほとんどです。
Sさんのケース
Sさんがほぼ引きこもりになってからしばらくして、遠くに住んでいるSさんの両親が異変に気づきました。
両親はSさんを説得し、病院の精神科につれていきました。医師の問診をうけ、Sさんは不安障害と診断されました。
Sさんはつぎのような治療を受けました。
・薬物治療・・・ベンゾジアゼピン系抗不安薬の服用
・精神療法・・・支持的精神療法
Sさんは現在も治療中ですが、だんだんと快方に向かっています。社会復帰も視野に入っています。
惜しむらくは、もっと早く、病気に気づいて、病院に行ければよかったということです。
精神科に行くことは抵抗があるかもしれません。症状が現れて、生活に影響が出てきた時点で、何かしら病気だと思うことが大切です。
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